パートやアルバイトで働くとき、よく耳にするのが「106万円の壁」と「130万円の壁」です。どちらも社会保険に関わる壁で、超えると自分で保険料を負担することになり、手取りに大きく影響します。

この記事では、2つの壁の違いと、超えたらどうなるか(保険料の負担・手取りの逆転)を整理します。あわせて2026年10月に撤廃された106万円の賃金要件、2026年4月の扶養認定の新ルール、交通費の扱い、一時的に超えたときの2年の特例まで、厚生労働省・日本年金機構の公開情報にそって解説します。

税金の壁(103万・123万・150万・178万)は数え方も意味も別物です。税の壁を含めた全体像は年収の壁の記事で整理しています。この記事は社会保険の扶養にしぼって解説します。

📌 この記事でわかること

  • 「106万円の壁」と「130万円の壁」の違い
  • 2026年10月1日に106万円の賃金要件(月8.8万円)が撤廃された点
  • 超えたらどうなるか(保険料負担・手取りの逆転)と、年収別の手取りの試算
  • 2026年4月の新ルール(労働契約ベースの扶養認定)
  • 一時的に超えたときの「2年」の特例と、交通費・手当の扱い

自分の場合の保険料と手取りを先に確認できます。年収(月給)を入れて社会保険料を計算すると、都道府県・年齢ごとの本人負担額がわかります。手取り計算ツールなら、社会保険料と税金を引いた手取りまで一度に出せます。

扶養の壁とは(社会保険の106万・130万)

「扶養の壁」とは、配偶者の社会保険の扶養に入って自分で保険料を払わずに済む範囲の上限のことです。社会保険には2つの壁があります。

  • 106万円の壁:一定の条件を満たすと、自分の勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する義務が生じる基準。賃金要件(月8.8万円)は2026年10月1日に撤廃されたため、現在は金額ではなく、勤務先の規模や週の労働時間などで決まります。
  • 130万円の壁:配偶者の社会保険の扶養から外れる基準。外れると自分で国民健康保険・国民年金などに加入します。

どちらも超えると保険料の負担が発生しますが、加入先(自分の勤務先か、自分で国保・国民年金か)が異なります。

106万円の壁と130万円の壁の違い

2つの壁は「対象になる人」と「加入先」が違います。

106万円の壁130万円の壁
性質勤務先の社保に加入義務配偶者の扶養から外れる
加入先勤務先の厚生年金・健康保険自分で国民年金・国保(条件次第で勤務先社保)
主な条件従業員51人以上・週20時間以上・学生でない(月8.8万円の賃金要件は2026年10月1日に撤廃)年間収入130万円(月額108,333円)未満が扶養の目安
将来の年金厚生年金で増える国民年金のみ(増えにくい)
保険料負担の目安年約15万円(年収106万円・東京都・40歳未満で試算。雇用保険を含む)国民年金だけで年215,040円(令和8年度 月17,920円)+国民健康保険料(自治体・世帯で異なる)

106万円の壁(短時間労働者の社会保険加入)は、次の条件をすべて満たすパート・アルバイトが対象です。

  1. 従業員(被保険者)が51人以上の企業(特定適用事業所)に勤めている
  2. 週の所定労働時間が20時間以上
  3. 学生ではない
  4. 2か月を超える雇用の見込みがある

「月額8.8万円以上(年約106万円)」はすでに条件ではありません。この賃金要件は、令和7年の年金制度改正法にもとづき2026年10月1日に撤廃(施行済み)されました。厚生労働省は、最低賃金が時給1,016円以上になれば週20時間で年約106万円に達し、要件として意味がなくなることを理由に挙げています。今は「年収が106万円を超えたか」ではなく、「勤務先が51人以上で、週20時間以上働くか」で判断します。

撤廃後に残る要件の補足です。

  • 週20時間は所定労働時間で判断します。ただし、所定が20時間未満でも、実際の労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、その後も続くと見込まれるときは、3か月目から加入となります(厚生労働省の適用拡大Q&A)。
  • 最低賃金の減額特例の対象者で月額8.8万円未満の人は、原則として加入対象外です(申し出により加入できます)。
  • 企業規模の要件は縮小が予定されています。従業員数の基準は2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上へ下がり、最終的に10年かけて撤廃される予定です(日本年金機構・厚生労働省)。いま51人未満の勤務先でも、数年のうちに対象になる可能性があります。

130万円の壁は、勤務先の規模や労働時間に関係なく、配偶者の扶養に入っているすべての人が対象です。年間収入130万円(月額108,333円)未満が扶養の目安で、見込み収入が基準以上になると扶養を外れます。

なお、基準額は人によって異なります。60歳以上または一定の障害のある人は180万円未満、19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く)は150万円未満です(日本年金機構・協会けんぽ)。

超えたらどうなる?保険料と手取りの逆転

壁を超えていちばん影響が大きいのは「手取りの逆転(働き損)」です。

たとえば年収129万円で扶養内なら社会保険料は雇用保険ぐらいですが、扶養を外れて勤務先の社会保険に入ると、年間で約18.6万円の保険料が新たに発生します(下の試算)。その結果、働く時間を増やしたのに手取りが減るという逆転が起きます。

この逆転を取り戻すには、勤務先の社保に入る場合で年収150万円前後を稼ぐ必要があるといわれます。下の試算でも、約151万円でようやく並びました。「壁を少しだけ超える」がいちばん損をしやすいゾーンです。

試算:年収別の手取り(扶養内 vs 勤務先の社保に加入)

同じ年収でも、保険料の払い方で手取りがどう変わるかを、当サイトの計算ロジック(社会保険料・手取りの計算ツールと同じもの)で試算しました。

試算の前提:東京都(協会けんぽ・健康保険料率9.85%)、30歳(介護保険なし)、雇用保険に加入(本人負担0.5%)、賞与なし(月給=年収÷12)、令和8年度の料率・令和8年分の税制。所得税・住民税は当サイトの概算で、住民税は自治体により異なります(非課税限度額は考慮していません)。配偶者側の税(配偶者控除など)や家族手当への影響は含みません。なお「扶養内」の行は、勤務先が51人未満など社保の加入対象外で、配偶者の扶養に入れる場合の比較です。51人以上で週20時間以上働くと、扶養内のまま働くことはできません。

年収区分社会保険料(年)所得税+住民税(年)手取り(年)
105万円扶養内(雇用保険のみ)5,244円0円1,044,756円
105万円勤務先の社保に加入153,876円0円896,124円
120万円扶養内(雇用保険のみ)6,000円5,000円1,189,000円
120万円勤務先の社保に加入171,516円0円1,028,484円
129万円扶養内(雇用保険のみ)6,444円13,800円1,269,756円
129万円勤務先の社保に加入192,228円0円1,097,772円
150万円勤務先の社保に加入220,308円13,400円1,266,292円

読み取れるポイントは次の3つです。

  • 年収129万円で社保に加入すると、扶養内に比べて手取りが約17.2万円少ない(1,269,756円 → 1,097,772円)。社会保険料は約18.6万円増えますが、住民税が下がるため差は少し縮まります。
  • 加入した場合の手取りが、扶養内129万円の手取り(1,269,756円)に追いつくのは年収約151万円です(151万円で1,275,244円)。150万円ちょうどでは1,266,292円で、わずかに届きません。
  • 扶養を外れて自分で国保・国民年金に入る場合(勤務先に社保がないケース)は、年収130万円で国民年金だけでも年215,040円かかります(社会保険料控除で税金は0円)。国民健康保険料を入れる前の段階で、手取りは約107.8万円(1,078,456円)です。扶養内129万円の約127万円より約19.1万円少なく、ここに国保料が加わります。

なお、40歳以上は介護保険料が加わり、保険料はさらに増えます。表の「扶養内」は、本人の社会保険料が雇用保険(本人負担0.5%)だけという前提です。

一方で、勤務先の社保に入ると、保険料は増えますが将来の厚生年金が増え、傷病手当金や出産手当金などの保障も受けられます。目先の手取りだけでなく、長期のメリットも含めて判断するのがポイントです。

2026年4月の新ルール(労働契約ベース・残業代除外)

2026年4月1日以降の被扶養者の認定から、年間収入の見込み方が見直されました(厚生労働省の通知・日本年金機構の案内)。

  • 労働契約の内容で判定:「労働条件通知書」などに書かれた賃金(基本給+諸手当)から見込まれる年間収入が130万円未満で、ほかの収入が見込まれない場合、原則として被扶養者として扱われます。同居なら被保険者の年間収入の2分の1未満、別居なら被保険者からの援助額より少ないことも必要です。
  • 一時的な収入増では外れない:認定後に、契約時には見込めなかった臨時の収入で年間収入が130万円を超えても、社会通念上妥当な範囲であれば、扶養の認定は変わりません。

繁忙期だけ収入が増えるようなケースで、すぐに扶養を外れずに済むようになった点が大きな変更です。

この方法が使えないケース

次のような場合は、労働契約の内容から年間収入を判定できないため、従来どおり給与明細や課税(非課税)証明書などで判断されます(日本年金機構)。

  • 契約期間が1年未満の場合
  • 「シフト制による」など、労働時間の記載が不明確な場合
  • 「通勤手当有」などと書かれていて、手当の金額が不明確な場合

必要な書類は、被扶養者(異動)届に添える労働条件通知書または雇用契約書などと、「給与収入のみである」旨の申し立てです。契約の更新や労働条件の変更があるたびに、書類を出し直す必要があります(協会けんぽ)。

一時的に超えてしまったときの「2年」の特例

「年収の壁・支援強化パッケージ」により、人手不足などで一時的に年収が130万円を超えても、勤務先(パート先)の事業主の証明を添付すれば、原則として連続2回まで(おおむね2年)扶養に入り続けられる特例があります。

この特例を使うには、事業主が「一時的な収入増である」ことを証明する書類(協会けんぽなどが様式を用意しています)を、被扶養者の認定に必要な通常の書類に添えて、被保険者(配偶者)が加入する協会けんぽ・健康保険組合に提出します。恒常的に130万円を超える働き方になった場合は対象外です。

この特例と、前の章の「労働契約ベース」の判定は別の仕組みです。前者は契約書に書かれた賃金で見込みを立てる方法、後者は一時的に増えた収入を事業主の証明で扱う特例です。どちらを使えるかは、加入している協会けんぽ・健康保険組合に確認してください。

制度の相談先として、厚生労働省は「年収の壁突破・総合相談窓口」(0120-030-045、平日8時30分〜18時15分)を案内しています。

交通費・手当は含む?

社会保険の130万円の判定では、交通費(通勤手当)や残業手当、各種手当もすべて含めた総収入で判断します。ここが税金の「103万円の壁」(交通費は原則含めない)との大きな違いです。2026年4月からの労働契約ベースの判定でも、手当は賃金に含めて年間収入を見込みます(日本年金機構)。

「税金では交通費が含まれないのに、社会保険では含まれる」ため、同じ年収でも判定が変わることがあります。複数のパート先がある場合は、すべての収入を合算して130万円を判定します。

給与以外の収入も含まれる

扶養の収入には、給与だけでなく、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます(日本年金機構)。退職後に失業手当を受け取る場合などは、失業保険の記事も参考にしてください。病気やケガで受け取る傷病手当金の金額は、傷病手当金の計算ツールで確認できます。

出典・参考

この記事の数値と制度は、2026年10月16日時点で下記の公的ページを確認したものです。個別のケースの判断は、加入している健康保険の保険者(協会けんぽ・健康保険組合)や年金事務所でご確認ください。保険料の試算は当サイトの概算で、実際の金額とは異なる場合があります。

よくある質問

106万円と130万円、どちらを意識すればいいですか?

勤務先が従業員51人以上で、週の所定労働時間が20時間以上なら社保加入の対象になる可能性があります(学生は対象外)。それ以外で配偶者の扶養に入っている人は、年間収入130万円が目安です。まず自分の勤務先が加入対象かを確認しましょう。

2026年10月から106万円の壁はなくなったのですか?

「月額8.8万円(年約106万円)以上」という賃金要件は、2026年10月1日に撤廃されました。ただし、勤務先が51人以上であること、週20時間以上であること、学生でないことといった要件は残っています。収入が低くても週20時間以上働けば、加入対象になります。

うっかり130万円を超えたらどうなりますか?

扶養の判定は、今後1年間の収入の見込み(月額に直すと108,333円以下)で行います。契約時に見込めなかった臨時の収入で超えた場合は、社会通念上妥当な範囲であれば認定は変わりません。人手不足などで一時的に超える場合は、事業主証明を添えて連続2回まで扶養を続けられる特例もあります。

扶養を外れても得になるのは年収いくらからですか?

東京都・30歳・勤務先の社保に加入する前提の試算では、年収約151万円で、扶養内129万円の手取りに並びます。130万円を少し超えるだけだと保険料負担で手取りが減りやすいので、超えるなら一気に増やすのが基本です。

130万円を超えると将来の年金は増えますか?

勤務先の厚生年金に加入する場合は将来の年金が増えます。国民年金のみの場合は増えにくいです。保険料負担と将来の保障のバランスで考えましょう。