会社を辞めたとき、生活を支えてくれるのが「失業保険」(正式には雇用保険の基本手当、いわゆる失業手当)です。とはいえ「いくらもらえるのか」「いつから・どうやって受け取るのか」は意外とわかりにくいものです。
この記事では、失業保険がいくらもらえるかを計算式と手取り別の早見表で整理し、もらい方の流れまで解説します。自己都合と会社都合の違いや、2025年4月から短縮された給付制限、受給中のアルバイトのルールもまとめます。金額は、2026年8月1日に改定された上限額にもとづいています。
📌 この記事でわかること
- 失業保険の受給条件
- いくらもらえるかの計算式(賃金日額 × 給付率 × 給付日数)と、月給30万円の計算例
- 手取り別の早見表と所定給付日数
- 自己都合と会社都合の違い・給付制限の1か月化
- もらい方の流れ(具体的な日程例)・必要書類・受給中のバイトのルール
失業保険とは・受給条件
失業保険(基本手当)は、働く意思と能力があるのに仕事が見つからない人に、再就職までの生活を支えるために支給される雇用保険の給付です。受け取るには、主に次の条件を満たす必要があります。
- 被保険者期間:離職日以前の2年間に被保険者期間が通算12か月以上あること。
- 倒産・解雇などの会社都合(特定受給資格者)や特定理由離職者は、1年間に6か月以上でOK。
- 被保険者期間は、賃金支払の基礎となった日数が11日以上ある月(または労働時間が80時間以上ある月)を1か月として数えます。
- 求職活動:働く意思と能力があり、ハローワークで求職の申し込みをして積極的に就職活動をしていること。
病気やケガですぐに働けない場合は、まず傷病手当などの別の制度が対象になります。
いくらもらえる?計算方法(賃金日額・給付率)
1日あたりの支給額を「基本手当日額」といい、次の2ステップで計算します。
① 賃金日額 = 離職前6か月の賃金合計(賞与は除く)÷ 180
② 基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(50〜80%)
賃金は、税金や社会保険料を引く前の総支給額で数えます。給付率は賃金が低い人ほど高くなります(おおむね50〜80%、60〜64歳は45〜80%)。また、基本手当日額には年齢別の上限があり、毎年8月1日に改定されます。2026年8月1日からの上限額は次のとおりです。
| 年齢 | 賃金日額の上限 | 基本手当日額の上限 |
|---|---|---|
| 30歳未満 | 14,900円 | 7,450円 |
| 30〜45歳未満 | 16,540円 | 8,270円 |
| 45〜60歳未満 | 18,220円 | 9,110円 |
| 60〜65歳未満 | 17,400円 | 7,830円 |
下限は、賃金日額3,203円(基本手当日額2,562円)です。
給付率はどう決まる?
給付率は賃金日額の水準で変わります。次は、60歳未満の区分の計算式です(w=賃金日額)。
| 賃金日額(w) | 基本手当日額 |
|---|---|
| 3,203円以上 5,480円未満 | w × 0.8(給付率80%) |
| 5,480円以上 13,490円以下 | 0.8w − 0.3 ×〔(w − 5,480) ÷ (13,490 − 5,480)〕× w(80%から50%へ段階的に低下) |
| 13,490円超(上限まで) | w × 0.5(給付率50%) |
上限額を超える賃金日額は、年齢別の上限額で頭打ちになります。60〜64歳は、低下の下限が45%で、計算式が異なります。
計算例:30〜44歳・月給30万円(賞与なし)
条件を決めて、実際に計算してみます。
- 離職前6か月の月給:毎月30万円(税引前、賞与なし)
- 年齢:30〜44歳、自己都合退職、被保険者期間10年未満
賃金日額 = 30万円 × 6か月 ÷ 180 = 10,000円
5,480円 ≦ 10,000円 ≦ 13,490円 なので、
基本手当日額 = 0.8 × 10,000 − 0.3 ×〔(10,000 − 5,480) ÷ 8,010〕× 10,000
= 8,000 − 1,692.88 = 6,307.12 → 6,307円(円未満切り捨て)
実質の給付率は約63%です。上限額(8,270円)には届かないので、この金額で支給されます。
- 4週間(28日分):6,307円 × 28日 = 176,596円
- 所定給付日数90日分の合計:6,307円 × 90日 = 567,630円
月給50万円になると、賃金日額は約16,667円で上限(16,540円)を超えるため、基本手当日額は上限の8,270円で頭打ちになります。
ご自身の月給・年齢・加入期間で試算したい方は、失業保険の計算シミュレーションで日額・給付日数・受給総額とスケジュールを自動計算できます。
手取り別の早見表(目安)
退職前の月給(額面、賞与を除く)から、基本手当日額の目安を計算した表です。手取りは、東京都・35歳の概算です。基本手当日額は、30〜44歳の区分の計算式(2026年8月1日以降)で試算しています(自己都合・所定給付日数90日の場合)。
| 退職前の月給(額面) | 手取りの目安 | 賃金日額 | 基本手当日額 | 28日分 | 90日合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 15万円 | 約12.5万円 | 5,000円 | 4,000円 | 112,000円 | 360,000円 |
| 20万円 | 約16.3万円 | 約6,667円 | 約5,036円 | 約14.1万円 | 約45.3万円 |
| 25万円 | 約20.0万円 | 約8,333円 | 約5,775円 | 約16.2万円 | 約52.0万円 |
| 30万円 | 約24.0万円 | 10,000円 | 6,307円 | 176,596円 | 567,630円 |
| 40万円 | 約31.4万円 | 約13,333円 | 約6,744円 | 約18.9万円 | 約60.7万円 |
| 50万円 | 約38.9万円 | 約16,667円 | 8,270円(上限) | 231,560円 | 744,300円 |
月給が高くなっても、給付率が下がり上限もあるため、受け取る額は月給に比例して増えません。
失業手当は非課税なので、所得税や社会保険料は引かれません。ただし退職後は健康保険(任意継続か国保)と国民年金の支払いが必要です。どちらが得かは任意継続と国民健康保険の記事で解説しています。退職後の家計全体は手取り計算ツールもあわせてどうぞ。
もらえる期間(所定給付日数)
受け取れる日数(所定給付日数)は、退職理由と被保険者期間・年齢で決まります。
自己都合(一般の離職)
| 被保険者期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
会社都合(特定受給資格者)は手厚く、年齢と被保険者期間に応じて90〜330日まで支給されます。
自己都合と会社都合の違い・給付制限(1か月に短縮)
退職理由によって、受け取り始めるまでの期間が変わります。
- 共通の待期7日:求職の申し込み後、失業の状態にある7日間は、誰でも基本手当が支給されません。
- 会社都合:待期7日のあと、すぐに支給が始まります。給付日数も多めです。
- 自己都合:待期7日に加えて「給付制限」があります。これが、離職日が2025年4月1日以降なら原則1か月に短縮されました(2025年3月31日以前の離職は原則2か月でした)。
ただし、次の場合は給付制限が3か月になります。
- 退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合で退職して受給資格決定を受けている場合。
- 自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇された場合(重責解雇)。
また、2025年4月以降に、リ・スキリングのための教育訓練などを受けた(受けている)場合は、給付制限が解除されて基本手当を受け取れます。対象の講座や条件は、お住まいのハローワークに確認してください。
つまり、自己都合でも以前より早く(待期7日+約1か月後から)受け取れるようになりました。
もらい方の流れと必要書類
失業保険を受け取るまでの流れは次のとおりです。下の日付は、自己都合で10月31日に退職し、11月16日に求職の申し込みをしたと仮定した目安です。実際の日付は、受給資格者証と受給説明会での案内で確認してください。
離職票を受け取る(例:10月31日退職)
退職後、会社から離職票1・2が届きます。
ハローワークで求職申込(例:11月16日)
住所地のハローワークで求職の申し込みをし、離職票を提出します。受給資格の確認と、離職理由の判定が行われます。
雇用保険説明会に参加
受給資格決定のあとに案内される日に参加します(出席は必須)。受給資格者証と失業認定申告書を受け取り、最初の失業認定日を知らされます。
待期7日(例:11月16日〜11月22日)
求職の申し込み後、失業の状態にある7日間は支給されません。会社都合の離職でも同じです。
給付制限1か月(例:11月23日〜12月22日ごろ)
自己都合退職のみ。待期のあとに原則1か月の給付制限があります(会社都合にはありません)。
失業認定日
原則として4週間に1回、ハローワークへ行き、失業認定申告書で求職活動の状況を報告します。
振込(認定から通常5営業日)
認定後、通常5営業日で、指定口座に基本手当が振り込まれます。給付制限が明けたあとの失業日が、支給の対象になります。
主な必要書類は、離職票1・2、マイナンバー確認書類、本人確認書類、写真(縦3.0cm×横2.4cmを2枚)、本人名義の通帳(またはキャッシュカード)です。
給付日数を多く残して早めに再就職すると、残った日数に応じて「再就職手当」を受け取れます。早期の再就職は損ではありません。
受給中のアルバイトのルール
受給中でも、一定の範囲ならアルバイトは可能です。ただし、ルールを守らないと不正受給になります。
- 週20時間未満であること(週20時間以上や31日以上の雇用見込みは「就職」とみなされます)。
- 働いた日は、失業認定のときに必ず申告すること。申告した日の手当は調整され、支給日数は先送りになります(消えません)。
申告が必要な仕事は、パート、アルバイト、日雇、派遣就業、試用期間・研修期間のほか、自営や請負、手伝いで収入を得た場合も含まれます。
無申告で働くと不正受給となり、ハローワークは次の措置を取ります。
- 不正を行った日以後の基本手当が支給されない
- 不正に受け取った金額の返還
- 返還に加えて、不正に受け取った額の最大2倍の納付(いわゆる「3倍返し」)
働いたら必ず正直に申告しましょう。
出典・参考
この記事の金額・手続きは、2026年10月16日時点で下記の公的ページを確認したものです。賃金日額・基本手当日額の上限額は、2026年8月1日改定後のものです。個別の受給資格や給付日数は、お住まいの管轄ハローワークでご確認ください。早見表と計算例は、公式の計算式にもとづく当サイトの試算です。
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(受給資格・賃金日額・年齢別の上限額)
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」(手続きの流れ・必要書類・失業認定。給付制限の期間は下記の厚生労働省のページを基準にしています)
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」(2026年8月1日からの上限額・下限額)
- 厚生労働省「令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について」と、その資料「基本手当日額の計算式及び金額」(PDF)(給付率の計算式・賃金日額の区分)
- 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」(給付制限の期間・3か月になる場合・教育訓練による解除)
- ハローワークインターネットサービス「不正受給の典型例」(申告が必要な就労・不正受給の措置)
- 手取り計算ツール(当サイト。早見表の手取り額の試算に使用)
よくある質問
自己都合だとすぐにはもらえないのですか?
待期7日に加えて給付制限がありますが、離職日が2025年4月1日以降なら原則1か月に短縮されています。以前より早く受け取れます。
一度もらうと、次にもらえるのはいつですか?
受給すると被保険者期間はリセットされます。次に受け取るには、改めて受給要件(原則として被保険者期間12か月)を満たす必要があります。
失業手当に税金はかかりますか?
失業手当は非課税です。所得税・住民税はかかりません。ただし退職後の健康保険料・国民年金は別途必要です。
手取り20万円だといくらもらえますか?
手取り20万円は額面で月給25万円ほどに当たります。賃金日額はおよそ8,300円で、30〜44歳なら基本手当日額は約5,800円が目安です。1か月(28日分)でおよそ16万円、90日で約52万円程度になります(年齢・賃金の内訳で変動します)。
受給中に働いたことを申告しないとどうなりますか?
不正受給として、不正を行った日以後の手当が止まり、受け取った額の返還に加えて、最大2倍の納付を求められることがあります。アルバイトも日雇も、失業認定申告書に必ず申告してください。